卵管は、卵子と精子が出会う場所であり、受精卵が子宮へ運ばれる通路でもあります。この経路に問題があると、ほかの条件がすべて整っていても妊娠は成立しません。
卵管因子は女性不妊の原因の約30〜40%を占めるとされ、しかも自覚症状がほとんどないのが特徴です。この記事では、卵管因子不妊の検査と治療について解説します。
卵管が果たしている3つの役割
卵管は単なる「管」ではありません。次の重要な働きを担っています。
- 卵子を捉える(ピックアップ):卵管の先端にある卵管采が、排卵された卵子を拾い上げます
- 受精の場を提供する:卵管膨大部で精子と卵子が出会い、受精します
- 受精卵を運ぶ:繊毛の動きと管の蠕動によって、受精卵を子宮へ送ります
つまり卵管は、輸送路であると同時に受精の現場でもあります。
卵管が詰まる主な原因
①クラミジア感染
もっとも多い原因です。クラミジアは自覚症状がほとんどないまま進行し、卵管の炎症と癒着を引き起こします。
「感染した覚えがない」という方でも、抗体検査で既往が判明することは珍しくありません。過去の感染が現在の卵管閉塞につながっているケースが多くみられます。
②子宮内膜症
腹腔内の炎症と癒着により、卵管の動きが妨げられます。卵管そのものが詰まっていなくても、卵管采が動かせずピックアップできない状態になることがあります。
③腹部手術の既往
虫垂炎(盲腸)の手術、卵巣嚢腫の手術、帝王切開などの後に癒着が生じることがあります。
④骨盤内炎症性疾患(PID)
淋菌などによる骨盤内の感染も原因となります。
卵管の状態を調べる検査
子宮卵管造影検査(HSG)
もっとも基本的な検査です。造影剤を子宮から注入し、卵管を通って腹腔内へ流れる様子をX線で確認します。詰まっている部位や、卵管周囲の癒着の程度が推測できます。
子宮卵管超音波造影検査
超音波で観察する方法です。X線被ばくがなく、痛みも比較的軽いとされます。ただし卵管の詳細な形態評価はHSGに劣ります。
腹腔鏡検査
もっとも正確な診断方法です。実際に腹腔内を観察でき、色素を通して卵管の通過性を確認します。癒着があればその場で剥離できる利点もあります。ただし全身麻酔と入院が必要です。
卵管の「詰まり方」による違い
| 部位 | 特徴 | 治療の考え方 |
|---|---|---|
| 間質部(子宮側) | 粘液の詰まりのこともある | FTで開通する可能性が高い |
| 峡部 | 炎症後の閉塞が多い | FTを検討 |
| 采部(先端) | 癒着していることが多い | 手術しても再閉塞しやすい |
| 卵管水腫 | 液体がたまり膨らむ | 体外受精前に切除・結紮を検討 |
卵管水腫には特別な注意が必要
卵管の先が閉じて液体がたまった状態を卵管水腫といいます。これがあると、体外受精の成績が明らかに下がることが知られています。
理由は、たまった液体が子宮腔へ逆流し、胚に対して悪影響を及ぼすためと考えられています。着床を妨げるだけでなく、流産率も上がるとされます。
このため、卵管水腫がある場合は、体外受精の前に卵管を切除するか、根元で結紮することが推奨されます。手術によって妊娠率が改善することが複数の研究で示されています。
治療の選択肢
①卵管鏡下卵管形成術(FT)
細い内視鏡とバルーンを卵管内に挿入し、詰まりを内側から広げる手術です。
- 開腹しない低侵襲な手術
- 日帰りまたは短期入院
- 開通率は**70〜90%**程度
- 開通後の妊娠率は30%前後
- 保険適用
ただし、時間の経過で再閉塞することがあります。開通後は半年程度が勝負と考え、その間に妊娠を目指すのが一般的です。
②体外受精
卵管を経由せずに妊娠を目指す方法です。両側卵管閉塞は体外受精の絶対適応とされます。
年齢が高い場合や、他にも不妊因子がある場合は、手術を経ずに体外受精へ進むほうが合理的なことも多くあります。
③どちらを選ぶか
判断のポイントは次の通りです。
| FTが向いている | 体外受精が向いている |
|---|---|
| 年齢が若い | 年齢が高い |
| 閉塞が子宮側(間質部・峡部) | 閉塞が先端側、卵管水腫がある |
| 他に不妊因子がない | 男性因子など他の因子もある |
| 自然妊娠を希望する | 早く結果を出したい |
よくある質問
Q. 片側だけ詰まっていました。妊娠できますか?
A. 可能です。通っている側の卵巣から排卵する周期にチャンスがあります。ただし単純に確率は下がるため、年齢によっては早めのステップアップを検討します。
Q. クラミジアの治療をすれば卵管は元に戻りますか?
A. 感染そのものは薬で治療できますが、すでに生じた癒着や閉塞は元に戻りません。だからこそ早期発見が重要です。
Q. 卵管を切除したら女性ホルモンは減りますか?
A. 卵管を切除しても卵巣は残るため、ホルモン分泌への影響は基本的にありません。
まとめ
- 卵管因子は女性不妊の30〜40%を占め、自覚症状はほとんどありません
- 主な原因はクラミジア感染と子宮内膜症です
- 卵管水腫がある場合、体外受精の前に処置を検討します
- FTと体外受精は、年齢と閉塞部位で使い分けます
自覚症状がないからこそ、検査でしか見つけられません。
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ご利用にあたって
本記事は、不妊治療について一般的な情報をお伝えすることを目的として作成しています。記載している検査・治療の内容や数値は、あくまで一般的な目安です。適応や治療方針は一人ひとりの状態によって異なり、医療機関ごとに方針が異なる場合もあります。実際の診断・治療については、必ず主治医にご相談ください。
また、法制度や公的支援の内容は改定されることがあります。手続きの際は、必ず厚生労働省・お住まいの自治体・各医療機関の最新の公表情報をご確認ください。