初診の血液検査でクラミジアの項目が入っていて、「なぜ性感染症の検査を?」と戸惑った方もいるかもしれません。
クラミジア感染は、日本でもっとも多い性感染症であると同時に、卵管性不妊の最大の原因でもあります。この記事では、クラミジアが不妊検査に含まれる理由と、結果の読み方を解説します。
クラミジアはなぜ不妊の原因になるのか
クラミジア・トラコマティスは、腟から子宮頸管に感染し、そこから子宮内膜、卵管、腹腔内へと上行していきます。
問題は、女性の約8割が無症状という点です。おりものが少し増える程度で、多くの方は気づきません。そのまま数年が経過し、不妊検査で初めて既往が判明する——これがもっとも典型的な経過です。
上行した感染は卵管に炎症を起こし、次のような結果を招きます。
- 卵管内腔の癒着・閉塞
- 卵管周囲の癒着(卵管采が動かせなくなる)
- 卵管水腫
- 骨盤内の広範な癒着
さらに、卵管が部分的に狭くなると子宮外妊娠のリスクも高まります。
2種類の検査——抗原検査と抗体検査
クラミジア検査には性質の異なる2種類があります。この違いを理解することが重要です。
| 検査 | 調べるもの | わかること |
|---|---|---|
| 抗原検査(PCR等) | 病原体そのもの | 現在感染しているか |
| 抗体検査(IgG・IgA) | 血液中の抗体 | 過去に感染したことがあるか |
抗原検査
子宮頸管の分泌物や尿を採取し、クラミジアのDNAを検出します。陽性であれば現在感染していることを意味し、治療が必要です。
抗体検査(IgG・IgA)
血液検査で行います。
- IgG陽性:過去に感染したことがある。感染から数か月〜数年、あるいは生涯にわたり陽性が続きます
- IgA陽性:比較的最近の感染、または活動性の感染を示唆します
不妊検査で重視されるのはIgG抗体です。IgGが陽性であれば、たとえ現在の感染がなくても、すでに卵管が障害を受けている可能性を考えます。
IgG陽性だったらどうなるか
「感染した覚えがない」と驚かれる方が多いのですが、無症状の感染が大半である以上、これは自然なことです。過去のパートナーからの感染である場合もあります。
重要なのは、誰から感染したかを詮索することではなく、卵管の状態を確認することです。
IgG陽性の場合、次のように進みます。
- 抗原検査で現在の感染の有無を確認
- 感染があればパートナーとともに抗菌薬で治療
- 子宮卵管造影検査で卵管の状態を確認
- 卵管閉塞や卵管水腫があれば、それに応じた治療方針を検討
抗体が陽性でも卵管が正常なことは十分にあります。逆に、抗体陽性は卵管検査を急ぐ理由になります。
治療
現在感染がある場合は、抗菌薬を服用します。
- アジスロマイシン(1回内服)
- ドキシサイクリン(7日間内服)など
重要なのは、パートナーも同時に治療することです。片方だけ治療しても再感染を繰り返します(ピンポン感染)。治療中は性交を避けるか、コンドームを使用してください。
治療後は、指定された時期に治癒確認の検査を受けます。
なお、抗菌薬で治療しても、すでに生じた卵管の癒着や閉塞は元に戻りません。感染そのものは治せても、後遺症は残るということです。
男性側の検査
男性も無症状のことが多く、尿検査で調べられます。男性では尿道炎や精巣上体炎の原因となり、精路の閉塞につながることもあります。
夫婦で不妊検査を受ける際は、男性も検査を受けることをおすすめします。
費用
- 抗原検査:保険適用で1,000〜2,000円程度
- 抗体検査:保険適用で1,500〜2,500円程度
いずれも不妊検査の一環として実施される場合、保険適用となることが一般的です。
よくある質問
Q. 陽性と言われて夫に説明しづらいです。
A. クラミジアは感染してから発覚まで数年経っていることが多く、いつ誰から感染したかを特定することはできません。医師からも「過去の感染歴を示すもので、時期の特定はできない」と説明してもらえます。まずは二人で治療と検査を進めることが大切です。
Q. 抗体が陽性でも自然妊娠できますか?
A. できます。抗体陽性は「卵管が障害されている可能性がある」ことを示すサインであり、閉塞の証明ではありません。子宮卵管造影検査で確認しましょう。
Q. 治療すれば抗体は陰性になりますか?
A. IgG抗体は治療後も長期間陽性が続きます。抗体の値で治癒を判断することはできません。
Q. 体外受精をすればクラミジアの影響は関係なくなりますか?
A. 卵管を経由しないため、卵管閉塞の影響は回避できます。ただし卵管水腫がある場合は着床に悪影響を及ぼすため、事前の処置が必要です。
まとめ
- クラミジアは無症状のまま卵管を障害する、卵管性不妊の最大の原因です
- 抗原検査は「現在の感染」、抗体検査(IgG)は「過去の感染歴」を示します
- IgG陽性は、卵管の状態を確認すべきサインです
- 治療はパートナーと同時に。ただし生じた癒着は元に戻りません
責めるべき相手を探す検査ではなく、卵管を守るための検査と考えてください。
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ご利用にあたって
本記事は、不妊治療について一般的な情報をお伝えすることを目的として作成しています。記載している検査・治療の内容や数値は、あくまで一般的な目安です。適応や治療方針は一人ひとりの状態によって異なり、医療機関ごとに方針が異なる場合もあります。実際の診断・治療については、必ず主治医にご相談ください。
また、法制度や公的支援の内容は改定されることがあります。手続きの際は、必ず厚生労働省・お住まいの自治体・各医療機関の最新の公表情報をご確認ください。