排卵はなぜ起こる?4つのホルモンの働きをやさしく図解

排卵はなぜ起こる?4つのホルモンの働きをやさしく図解

不妊治療を受けていると、FSH、LH、E2、P4といったアルファベットが飛び交います。採血のたびに数値を告げられても、それが何を意味するのかわからないまま頷いている——そんな方も多いのではないでしょうか。

排卵は、4つのホルモンが順番にバトンを渡していくしくみで起こります。この流れを理解すると、検査値の意味も、薬が何をしているのかも見えてきます。

排卵を司る司令系統:3つの臓器

ホルモンの指令は、次の順に伝わります。

視床下部(脳)→ 下垂体(脳)→ 卵巣

この一連の流れを視床下部-下垂体-卵巣系と呼びます。どこか一か所でも滞ると排卵は起こりません。排卵障害の治療は、「どの階層でつまずいているか」を見極めることから始まります。

登場する4つのホルモン

ホルモン どこから出るか 主な働き
FSH(卵胞刺激ホルモン) 下垂体 卵胞を育てる
LH(黄体形成ホルモン) 下垂体 排卵を起こす/黄体を維持する
エストロゲン(E2) 卵巣(卵胞) 子宮内膜を厚くする/頸管粘液を増やす
プロゲステロン(P4) 卵巣(黄体) 子宮内膜を着床に適した状態にする

月経周期に沿って追いかける

①卵胞期前半:FSHが卵胞を育てる

月経が始まると、下垂体からFSHが分泌されます。卵巣のなかの原始卵胞のうち、いくつかがこれに反応して育ち始めます。

このときのFSHの値が高いということは、卵巣が反応しにくくなっていて脳が強く指令を出している状態を意味します。月経3日目前後のFSHが高い場合、卵巣予備能の低下を疑います。

②卵胞期後半:エストロゲンが増える

卵胞が育つにつれ、卵胞からエストロゲン(E2)が分泌されます。E2には次の働きがあります。

  • 子宮内膜を厚くする
  • 子宮頸管の粘液を増やし、精子が通りやすくする
  • FSHの分泌を抑える(ネガティブフィードバック)

このFSHを抑える働きによって、主席卵胞だけが育ち、ほかの卵胞は退縮します。通常は1個しか排卵しないのはこのしくみのおかげです。

体外受精で複数の卵子を得るために注射薬を使うのは、この抑制を上回るFSHを外から与えているからです。

③LHサージ:排卵の引き金

エストロゲンが一定濃度を一定時間超えると、フィードバックの向きが逆転し、下垂体からLHが一気に放出されます。これがLHサージです。

LHサージが起こると、卵子は最終的な成熟(減数分裂の再開)に入り、サージ開始から約36時間後(24〜48時間の幅)に卵胞が破れて排卵します。

※出典:生殖内分泌学の標準的な教科書(Speroff’s Clinical Gynecologic Endocrinology and Infertility)。LHサージ開始から排卵までは平均約36時間(24〜48時間の幅)

排卵検査薬はこのLHサージを尿で検出しています。また体外受精でhCG注射を使うのは、hCGがLHとよく似た構造をもち、LHサージの代わりを務められるためです。

④黄体期:プロゲステロンが着床を支える

排卵後の卵胞は黄体に変化し、プロゲステロン(P4)を分泌します。P4には次の働きがあります。

  • 子宮内膜を着床に適した状態(分泌期内膜)に変える
  • 基礎体温を上げる(高温期)
  • 子宮の収縮を抑える

妊娠が成立しなければ黄体は約14日で退縮し、P4とE2が下がって子宮内膜が剥がれます。これが月経です。

妊娠が成立すると、胎盤のもとになる組織からhCGが分泌され、黄体が維持されてP4が出続けます。妊娠検査薬が検出しているのは、このhCGです。

検査値をいつ測るかが重要

同じ項目でも、測る時期によって意味がまったく変わります。

検査時期 主に測る項目 わかること
月経3日目前後 FSH、LH、E2、AMH 卵巣予備能、PCOSの傾向
排卵期 E2、LH 卵胞の成熟度、排卵の時期
高温期中期 P4、E2 排卵の有無、黄体機能

「前回と数値が違う」と不安になることがありますが、測定時期が異なれば違って当然です。医師が「いつの数値か」を必ず確認するのはこのためです。

ホルモンの流れから見た排卵障害

WHOは排卵障害を大きく3群に分けています。

  • 第1群(視床下部・下垂体の機能低下):指令そのものが出ていない状態。過度の減量や運動、ストレスが原因になることがあります
  • 第2群(視床下部・下垂体・卵巣系の機能異常):多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)が代表。もっとも多いタイプです
  • 第3群(卵巣そのものの機能低下):早発卵巣不全など。FSHが高値になります

どの群かによって、使う薬も治療方針も変わります。

よくある質問

Q. LHが高いと言われました。何を意味しますか?
A. 月経初期にLHがFSHを上回って高い場合、多嚢胞性卵巣症候群の傾向を示すことがあります。ただしLHは変動が大きいため、1回の値だけで判断はしません。

Q. プロゲステロンが低いと着床しないのですか?
A. 高温期中期のP4が低い場合は排卵や黄体機能の評価を行いますが、P4も日内変動が大きく、1回の測定では判断できません。必要に応じて黄体補充を行います。

まとめ

  • 排卵は視床下部→下垂体→卵巣という指令系統で起こります
  • FSHが卵胞を育て、E2が増え、LHサージが排卵を起こし、P4が着床を支えます
  • ホルモン検査は測る時期によって意味が変わります

薬が何をしているのかがわかると、治療への納得感が変わってきます。

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ご利用にあたって

本記事は、不妊治療について一般的な情報をお伝えすることを目的として作成しています。記載している検査・治療の内容や数値は、あくまで一般的な目安です。適応や治療方針は一人ひとりの状態によって異なり、医療機関ごとに方針が異なる場合もあります。実際の診断・治療については、必ず主治医にご相談ください。

また、法制度や公的支援の内容は改定されることがあります。手続きの際は、必ず厚生労働省・お住まいの自治体・各医療機関の最新の公表情報をご確認ください。

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