人工授精(AIH)とは?流れ・痛み・妊娠率・費用の目安

人工授精(AIH)とは?流れ・痛み・妊娠率・費用の目安

人工授精は、タイミング法の次の段階として位置づけられる治療です。名前の響きから大がかりな処置を想像される方もいますが、実際には数分で終わる、外来での簡単な処置です。

この記事では、人工授精の流れ、痛み、妊娠率、費用を具体的に解説します。

人工授精(AIH)とは

採取した精液を洗浄・濃縮し、運動性の良い精子を選び出して、細いカテーテルで子宮内に直接注入する治療です。

正式には配偶者間人工授精(AIH:Artificial Insemination with Husband’s semen)といいます。

タイミング法との違いは、精子が子宮頸管を通過するステップを省略できる点です。

  • 腟内に射精された精子のうち、子宮に到達できるのはごく一部
  • 人工授精では、選別した良好な精子を子宮内に直接届けられる

これにより、卵管に到達する精子の数を増やすことができます。

人工授精が有効なケース

  • 軽度〜中等度の男性因子(精子の数や運動率がやや低い)
  • 頸管因子(頸管粘液が少ない、フーナーテスト不良)
  • 性交障害(勃起障害、腟内射精障害)
  • 原因不明不妊
  • タイミング法で結果が出なかった場合

一方、次の場合は人工授精では妊娠が期待できません。

  • 両側の卵管が閉塞している
  • 精子の数・運動率が著しく低い(高度乏精子症)
  • 抗精子抗体が強陽性

治療の流れ

①排卵日の予測

超音波で卵胞の発育を確認し、実施日を決めます。必要に応じて排卵誘発薬を併用します。

hCG注射で排卵のタイミングをそろえることも多く、その場合は注射から34〜36時間後に実施します。

②精液の採取

当日の朝、自宅または院内の採精室で採取します。

  • 禁欲期間は2〜5日が目安
  • 自宅採取の場合は、体温程度に保って2時間以内に持参
  • 容器は施設から渡されたものを使用

③精子の調整(洗浄・濃縮)

採取した精液を遠心分離などで処理し、運動性の良い精子を選び出します。所要時間は1時間程度です。

この処理には次の意味があります。

  • 運動性の高い精子を選別する
  • 精液中のプロスタグランジン(子宮収縮を起こす物質)を除去する
  • 細菌や白血球を除去する

④子宮内への注入

内診台で、細いカテーテルを子宮の入口から挿入し、0.3〜0.5mL程度の精子浮遊液を子宮内に注入します。

  • 処置時間は1〜3分
  • 痛みはほとんどありません(生理痛程度の違和感を感じる方はいます)
  • 注入後は5〜15分程度安静にして終了

その後は通常通り帰宅でき、当日から普通に過ごせます。

⑤黄体補充

必要に応じて、黄体ホルモン剤を処方されます。

妊娠率

1周期あたりの妊娠率は、5〜10%程度です。

重要なのは累積の成績です。

実施回数 累積妊娠率の目安
3回 約15〜20%
6回 約20〜25%
7回以上 ほとんど上乗せなし

4〜6回で累積妊娠率が頭打ちになることが知られています。7回目以降を続けても効果は限定的とされ、この回数がステップアップの目安になります。

年齢別では、35歳未満で1周期8〜10%、40歳以上では2〜3%程度まで下がります。

費用

2022年4月から保険適用となりました。

  • 保険適用(3割負担):5,000〜1万円程度
  • 排卵誘発薬、注射を併用する場合はやや加算されます

人工授精には年齢制限も回数制限もありません(体外受精とは異なります)。

痛みと副作用

  • 痛み:ほとんどありません。カテーテル挿入時に軽い違和感を感じる程度
  • 出血:少量の出血がみられることがあります
  • 腹痛:注入後に軽い痛みが出ることがありますが、数時間で治まります
  • 感染:まれですが、発熱や強い腹痛があれば受診を
  • 多胎:排卵誘発を併用した場合、多胎のリスクが上がります

よくある質問

Q. 当日、夫は同席する必要がありますか?
A. 精液を持参できれば同席は不要です。自宅採取が可能な施設が多く、妻が持参する形でも実施できます。

Q. 処置後、安静にする必要はありますか?
A. 特別な安静は不要です。注入した精子が動いて出てしまうことはありません。当日から通常通り過ごせます。

Q. 人工授精の日に性交してもよいですか?
A. 問題ありません。むしろ妊娠率が上がる可能性があるとする報告もあります。医師に確認してください。

Q. 何回まで続けるべきですか?
A. 4〜6回が目安です。年齢が高い場合は3〜4回で体外受精への移行を検討することもあります。

まとめ

  • 人工授精は精子を子宮内に直接注入する、外来で数分の処置です
  • 頸管因子、軽度の男性因子、性交障害に有効です
  • 1周期あたりの妊娠率は5〜10%、4〜6回で頭打ちになります
  • 保険適用で5,000〜1万円程度、年齢・回数制限はありません
  • 痛みはほとんどなく、当日から通常通り過ごせます

負担が小さい治療である一方、回数の目安を意識して臨むことが大切です。

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本記事は、不妊治療について一般的な情報をお伝えすることを目的として作成しています。記載している検査・治療の内容や数値は、あくまで一般的な目安です。適応や治療方針は一人ひとりの状態によって異なり、医療機関ごとに方針が異なる場合もあります。実際の診断・治療については、必ず主治医にご相談ください。

また、法制度や公的支援の内容は改定されることがあります。手続きの際は、必ず厚生労働省・お住まいの自治体・各医療機関の最新の公表情報をご確認ください。

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